2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

若き日はわれに遠し───柴生田稔の歌集『入野』より

柴生田稔(しぼうた・みのる)。柴生田は陸軍予科士官学校教官を経て明治大学文学部の教授。 歌集『入野』には昭和34年から昭和40年にかけての歌を採録。 時代・情況は、60年安保前夜からベトナム反戦運動の始動期だった。 いつの日にか、60年代最末期に誕生…

“いまの世に、まだこれほどの男がいるのか。”──後藤正治著『はたらく若者たち』より

太田順一著『写真家 井上青龍の時代』については、後藤正治氏による朝日新聞の書評がよかった。井上青龍への「くぐもった共感と哀惜」があると書く。しみじみとしますね。昔のことですが、後藤正治氏とカメラマン太田順一氏は一緒に仕事をしたことがあった。…

まぼろしの歌人の面影を探して (……ついに巡りあいました)

面影を探し求めている「歌人」がいます(いました)。 創価大学経済学部教授だった大熊信行さんが、歌人としては口語歌をつくって昭和初期の新興短歌運動に加わり、米沢で「まるめら」を創刊・主宰したことは知られています。(「三行詩」の歌人とくれば土岐…

長野県の「二・四事件」(いわゆる「教員赤化事件」)の資料について。

岡野正(札幌市)さんという方が、私家版で『1930年代教員運動関係者名簿(改訂版)』(1996年)を出されています。 この本は、関係者全員の一人ひとり(!)について丹念に調べられたものです。 出身地、父母、続柄、活動歴、さらには「その後の消息(1996…

傘の唄──あるいは国民的歴史学運動の情念について

黒羽清隆〔きよたか〕という歴史学者。 彼は東京教育大学の学生時代、和歌森太郎と家永三郎という二人の碩学の、その愛弟子であった。 惜しくも53歳で病で逝ってしまったが、傑出した日本近代思想史家として少なからぬ著作を残した。 その歴史叙述には、詩魂…