2013-01-01から1年間の記事一覧

吉井勇の「寂しければ」の歌72首も続く。人の世の、あまりにも寂しき。

『吉井勇全集』第2巻に所収の歌集『天彦』「韮生の山峡」は、「寂しければ」の同じ言葉で始まる歌が72首も続く。人の世の、あまりにも寂しき。 一番寂寥を味わった歌人による詠嘆の集積──「昭和9年11月、土佐の国韮生の山峡猪野々の里に、ひとつの草庵を作り…

佐野美津男が残した掌編の佳品「かきつばたの花」

戦災孤児であった児童文学者・佐野美津男が残した掌編の佳品「かきつばたの花」【短編集『原猫(ウルねこ)のブルース』 (三省堂)に所収】 むかし、人の命はみじかかった。しかし、それにしても、つうの場合は、あまりにも、みじかすぎたようである。つう…

連載33.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年7月31日。

ニーチェの言葉「事実はなく、あるのは解釈である。」 『赤と黒』読了。爽快、湯上がり気分。ジュリアンよ、さらば。 ______________ 7月31日 第12回原水禁世界大会(8月3日中国派16カ国代表退場)

連載32.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年7月27日。

この前、NHK「妻よ語れというか」を見て思った、啄木の高慢さ。 「文学は神の法廷に於ける。陳述である。そこでは偽りなき自己告白が必ずしも是認されるとは限らない。むしろ告白の衝動をその極限において抑えた深い沈黙が勝利を得るであろう。何故なら神は…

連載31.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年7月18日。

スタンダールの『赤と黒』を読んだ。《ジュリアン・ソレル》とは何か、と念頭に置きつつ。 __________________ 7月18日 都学連(三派系)・京都府学連共催・全国自治会代表者会議〔明大〕、10月全学連再建準備会開催・12月再建大会開催を…

連載30.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年7月14日。

試験が終わった。 夏休みが来る。 夏休みには、本を読もう。 夏休みには、とにかく旅に出よう。京都へ行こうか。 「自分」を見つめよう。成長だ。精進。 『破戒』を読書中だ。戒を破る、誇り高き言葉。 _______________ 7月14日~17日 都学連…

連載29.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年7月6日。

期末テストに向けて。 _________________ 7月6日 関西三府県学連共催・日米合同委阻止全関西総決起集会〔立命館大〕に1300名結集、円山公園までデモ、全京都集会に合流の後、都ホテルにデモ、投石等で機動隊と衝突、8名逮捕

連載28.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月30日。

図書館から借りてきた本は、ダンテ『神曲 地獄篇』と高見順『死の淵より』の2冊。 図書館で読んだ『中原中也詩集』より、 「まことに人生、一瞬の夢ゴム風船の、美しきかな」 ________________________ 6月30日 反日共系各派150名、ハノイ・ハイフォン爆撃緊…

連載27.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月24日。

テスト、テスト、テスト、テスト。 図書館からバルザック『谷間のゆり』を借りてくる。 _____________ 6月24日 青医連・医学連、インターン制廃止・無給医局員の有給化等を要求して全国病院統一行動、13大学4000名が診療拒否・集会等を展開同24…

連載26.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月23日。

図書館では、伊藤整の『若き詩人の肖像』を読んだ。 「根見子」と2人で海岸へ散歩に行くところまで。 詩もいいなあ。_______________ 6月23日 都学連(三派系)主催・エンプラ寄港阻止・小選挙制粉砕全都決起集会〔清水公園〕に600名参加、日…

連載25.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月21日。

『倫理学』を図書館から借りてきた。 明日は数学と国語のテストがあるというのに。 図書館で、萩原朔太郎と島崎藤村の詩集を読んでいた。 藤村の詩── 「君ゆゑにわれは休まず 君ゆゑにわれは仆れず」 藤村の精進よ。 ____________ 6月21日 京大…

連載24.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月20日。

『ゲーテ格言集』を読む。 ______________ 6月20日 教育大文学部、評議会の筑波移転決定に抗議してスト(21日教育学部スト)同日 早大一文学部投票(21日スト中止決定、22日バリケード撤去、200名で学内デモ)

連載23.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月16日。

図書館から高橋和巳の『憂鬱なる党派』と久野収『戦後日本の思想』』を借りた。 『憂鬱なる党派』はいい。その中の一節、 「明日こそは、明日こそはと、決断を遅らせ、なにか理由づけては違った方向へ一時の慰めを得にゆく愚劣な人は皆、そのようにして自分…

連載22.  ある高校生の「読書記録」より。(高校1年生)1966年6月15日。

図書館で『三太郎の日記』『侏儒の言葉』を拾い読みした。 ※ 「春の苑くれなゐ匂ふ桃の花下照る道に出で立つ少女」──大伴家持 ______________________ 6月15日 6・15記念集会実行委主催・安保6・15記念政治集会〔九段会館〕、都学連(三派系)等の学生、労働…

連載21.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年6月12日。快晴

スケッチブックを携えて、天文台のある山にいく。 「朝」 なんといううららかな朝だろうよ娘たちの一塊が道端で立ち話をしている嬉しそうに笑っているそこだけが馬鹿に明るい誰も彼もがそこを通るのが眩しそうに見える ──山村暮鳥 ____________…

連載20.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年6月11日。

昨日、担任から「生い立ちの記」なるものを書くように言われた。先生のものの言い方が癇に障る。わざと没個性的かつ抽象的に綴り、最後に「世阿弥いわく、さて、言はんとすればなし」と書いておいた。 非凡な人のごとくにふるまへる 後のさびしさは 何にかた…

連載19.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年6月7日。

林芙美子の詩篇「蒼馬を見たり」の意が解った。 読書 岡潔『春風夏雨』 ※ 「自分という観念はつぎの三つの要素から成り立っている。 1.不変なもの 2.主宰者 3.自己本位のセンス」 ──岡潔『春風夏雨』再び自己について _________________________ 6月7日 教育…

連載18.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年6月4日。雨が降ったり止んだり

「旅は人生の姿である。人生そのものが實に旅なのである。」──三木清『人生論ノート』 僕の生き方、僕の人生観は……。 通学電車の中で、『フランクリン自伝』『車輪の下』を読む。 「トオイ、トオイ山ノナカデ、フカイ、フカイ雪ニウズモレテ、ツメタイ、ツメ…

連載17.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月30日。

中間考査終わって3日経った。 読書『アメリカ哲学史』。 人間の思想は水のようだ。 __________________ 5月30日 米原潜スヌーク号、横須賀初入港。反日共系各派100名、横須賀基地正門突破・基地内でデモ展開、刑特法違反で11名逮捕、夜、…

連載16.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月13日。

アフォリズムという文学形式で何か書きたい 読書──伊藤整『青春』。『講座哲学大系』第2巻の「古代哲学」「ギリシャ古典期の哲学」を勉強中。 ___________________ 5月13日 大阪市大で3名の私服自衛官を発見、学生の追及で学内無断立入り…

連載15.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月11日。

『三四郎』を読了。三四郎と里見美禰子。 「あなたは餘っ程度胸のない方ですね。」三四郎という男。ストレイシープ。 「うとうととして眼が覺めると女は何時の間にか、隣の爺さんと話を始めている。」 ※ 岡田から「よッ、気障!」と言われてしまった。気障な…

連載14.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月10日。

読書は、漱石の『三四郎』。“無意識の偽善者(アンコンシャス・ヒポクリット)”か。それに“露悪者”だった、な。 厭世を知る。 ※ 足元は見れない。 _______________ 5月10日 全学連(革マル系)100名、中国水爆実験に抗議し新橋駅構内で集会、…

連載13.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月9日。遠足の日

自分は小説を持っていって読んでいた。『性に目覚める頃』『友情』。 “青春の文学”を肯定するのか。 「ここに自然のつくった最も美しい花がある。しかも、自分の手のとゞくかもしれない處に。」(『友情』) _________________________ 5月9日 中国、第3回核…

連載12.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月6日。

テレビ「若者たち」を見る。「数学」少し複習。 今日の読書は、ルソーの『社会契約論』。

連載11.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月3日。

今日は憲法記念日。「憲法」について勉強する時間を自分の中につくろう。 スケッチブックを持って郊外に出かけた。憂鬱さから少しは解放された。 今日の読書、太宰治集の中から「斜陽」とルソーの『社会契約論』。 _______________ 吉本隆明…

連載10.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年5月2日。

過去があるからこそ、人間は不安なのだ。 昨日、『法華経』(上)と『資本論』(1)、(2)の3冊を」購入。 ___________ 吉本隆明『試行』17号発行。「情況への発言──ひとつの死」(これは2月に遭難死した岩淵五郎を追悼)

連載9.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月29日。くもり後はれ

おお、彼女はすぐ目の前のそこにいた! 人間とは、希望だ。 _______________ 4月28日~29日 日共四中総、国際共産主義路線における〝自主独立″の立場を確認

連載9.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月23日。

放課後、図書館で、サルトルの『存在と無』とパスカルの『パンセ』を拾い読み。読書虫。懐疑論者よ、実存に挑め! ___________ 4月23日 早大大浜総長・全理事、辞意を表明

連載8.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月22日。

昨日は、O書房で三木清『続哲学ノート』とスタンダールの『赤と黒』を買う。 ______________ 4月22日 中央実行委主催・春闘勝利等総決起集会〔日比谷野音〕 に民青同系1000名参加

連載7.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月20日。

昨日、学校の図書館から西田幾太郎の『善の研究』を借りた。 人間認識。人生いかに生くべきか。 ______________ 4月20日 反日共系各派、大学設置基準改悪・教免法改悪反対で決起集会〔清水谷公園〕に300名結集、文部省デモで3名逮捕