連載6.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月17日。

昨日、筑摩書房・現代文学大系『三島由紀夫集』を買う。「仮面の告白」を読み通す。“悪習”の方ばかりに走っている。 「人間」という命題にたいして。大江健三郎は「壁の中の人間」を。開高健は「集団の中の人間」を。 「人間」の探求を続けよう! __________…

連載5.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月15日。雨

昨日、学校の図書館からカント(上)『純粋理性批判』、カント(下)『実践理性批判他』を借りてきた。 今日の読書。イプセンの『人形の家』、桑原武夫の『文学入門』。 「英語」のリーダーの教科書を持って行くのを忘れた。「古典」の予習がまだまだ足りな…

連載4.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月13日。はれ

買ってきた『あすなろ物語』を熱中して読む。一気可成に読んでしまいたいが、明日の予習があるので、「寒月がかかれば」までにした。桑原武夫のいう“すぐれた文学”の条件の一つが「インタレストを感じること」であれば、確かに本書がそうだ。鮎太が自分と同…

連載3.  ある高校生の「読書記録」より。(高1)1966年4月5日。はれ

入学式。無事に終了した。5組だった。新入生総代は白井君だった。 NHK「路傍の石」を見る。通俗的。吾一少年の身の上に同情する気持ちがわく。 __________________ 4月5日 北海道学大など五学芸大学および岩手大などの学芸学部、教育大…

連載2.  ある高校生の「読書記録」より。(高1の新学期前)1966年4月2日。晴

昨日、『マルキシズムⅠ』(現代思想体系、筑摩書房)を購入。450円也。 _______________ 3月2日~3日 全学連(革マル系)第43回中央委〔東京〕、早大闘争の支援強化等を決議

連載1. ある高校生の「読書記録」より。(中学校を卒業した)1966年3月29日。晴天

昨日、『幼年時代(トルストイ)』『実践論・矛盾論』『人生論(トルストイ)』『林芙美子集』『社会契約論』『懐疑論』を購入した。又、一昨日には『共産党宣言』『精神分析入門』を購入した。 風が強い。春の嵐。まだ新学期が始まる前から、自分の高校生活…

若き日はわれに遠し───柴生田稔の歌集『入野』より

柴生田稔(しぼうた・みのる)。柴生田は陸軍予科士官学校教官を経て明治大学文学部の教授。 歌集『入野』には昭和34年から昭和40年にかけての歌を採録。 時代・情況は、60年安保前夜からベトナム反戦運動の始動期だった。 いつの日にか、60年代最末期に誕生…

“いまの世に、まだこれほどの男がいるのか。”──後藤正治著『はたらく若者たち』より

太田順一著『写真家 井上青龍の時代』については、後藤正治氏による朝日新聞の書評がよかった。井上青龍への「くぐもった共感と哀惜」があると書く。しみじみとしますね。昔のことですが、後藤正治氏とカメラマン太田順一氏は一緒に仕事をしたことがあった。…

まぼろしの歌人の面影を探して (……ついに巡りあいました)

面影を探し求めている「歌人」がいます(いました)。 創価大学経済学部教授だった大熊信行さんが、歌人としては口語歌をつくって昭和初期の新興短歌運動に加わり、米沢で「まるめら」を創刊・主宰したことは知られています。(「三行詩」の歌人とくれば土岐…

長野県の「二・四事件」(いわゆる「教員赤化事件」)の資料について。

岡野正(札幌市)さんという方が、私家版で『1930年代教員運動関係者名簿(改訂版)』(1996年)を出されています。 この本は、関係者全員の一人ひとり(!)について丹念に調べられたものです。 出身地、父母、続柄、活動歴、さらには「その後の消息(1996…

傘の唄──あるいは国民的歴史学運動の情念について

黒羽清隆〔きよたか〕という歴史学者。 彼は東京教育大学の学生時代、和歌森太郎と家永三郎という二人の碩学の、その愛弟子であった。 惜しくも53歳で病で逝ってしまったが、傑出した日本近代思想史家として少なからぬ著作を残した。 その歴史叙述には、詩魂…